8月 14, 2024

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バッテリ駆動ツールの背景と動向

充電式バッテリで駆動する最初のコードレス電動ドリルは、 1962年にBLACK+DECKER®によって設計および製造されました。バッテリ技術の進歩、世界的な工業化、DIY(日曜大工)活動の高まりに後押しされ、バッテリ駆動ツールの市場は爆発的に成長しました。

従来のコードレスの手持ち工具は12~36Vのバッテリ電圧で動作しますが、新たに最大72Vのバッテリ電圧で動作するツールが登場し、その市場が拡大しています。これは主に、このような高電圧バッテリ駆動ツールが提供できるより多くの電力を必要とするプロのユーザーの支持によって成長しています。しかし、これらの新型ツールには、バッテリ充電器、バッテリ/電源ツリー、モータ/モータドライバといった主要なサブシステムの進歩が必要になります。これらの課題に対処するために、オンセミは3つのサブシステム用に、ソリッドステートコンポーネントの完璧なポートフォリオを開発しました。 


バッテリ駆動ツールのためのシステムアーキテクチャ

トップレベルトポロジ

図1はバッテリ駆動ツールの主な機能を詳細に示す簡略ブロック図です。

図 1. バッテリ駆動ツール簡略ブロック図
図 1. バッテリ駆動ツール簡略ブロック図


バッテリ充電器

バッテリ充電器の役割は、スタンバイバッテリパックを効率的に充電することです。これは通常、単相115/230 VACを指定されたバッテリパック電圧に変換して行います。このサブシステムは、AC/DCコンバータステージと、過充電や過熱から保護する安全ステージで構成されています。

理想的なバッテリ充電器はコンパクトで、持ち運びや保管に便利なように設計されており、標準的なACコンセントと互換性があります。今日、ほぼすべてのバッテリ充電器は、効率を改善し、高調波歪みを低減し、規制基準に準拠するために、何らかの形の力率補正(PFC)機能を備えています。

バッテリと電源ツリー

バッテリ管理と電源ツリーは、パワーツール内のボードベースのサブシステムです。バッテリ管理はバッテリパックの頭脳のようなもので、バッテリが安全範囲外で動作しないようにしながら、バッテリの性能を監視および管理します。これには過充電や過放電などへの対処も含まれます。

電源ツリーは、システム内のすべてのロジックレベルと低電圧電源レールに電力を供給します。その目的は、他のサブシステムに必要なすべての電圧を効率的に供給することです。

モーション

パワーツールは何らかの種類のバッテリ駆動モータに依存しており、モータはブラシ付きDC(BDC)または3相ブラシレスDC(BLDC)モータのいずれかです。BLDCモータは、高効率、長寿命、静音性などの利点により、急速にハイエンドのバッテリ駆動ツールの主流になりつつあります。

これらのモータを駆動するパワーステージは、最適な機能を確保するために、コンパクトなフォームファクタ、高効率、信頼性の高い動作、内部保護など、いくつかの性能基準を満たす必要があります。

保護

モータが正常に動作するには電流サージが必要ですが、電流サージが適切に保護されていない場合は、電子機器や部品を破壊する可能性もあります。したがって、コードレスツールの重要な部分は、内部電子回路の保護です。

内部電子回路に対するもう一つの脅威は、静電気放電(ESD)です。コントローラのような低レベルの電子回路は、不要なESDに対して特に脆弱です。重要なコンポーネントの適切な内部保護なしで、バッテリ駆動ツールの高信頼性動作と長寿命は実現できません。


オンセミのバッテリ駆動ツール向けの必須コンポーネント

バッテリ充電器

バッテリ充電器では、AC/DC変換、PFC、DC/DC降圧変換に異なるトポロジが使用されます。最近のバッテリ充電器のすべてに共通しているのは、 MOSFET スイッチが必要なことです。

パワーツールで使用する場合、MOSFETは重負荷でも軽負荷でも、低導通損失および低スイッチング損失で効率的に動作する必要があります。これらの厳しい要件に対処するために、オンセミはクラス最高の性能指数を備え、極端なdVDS/dt定格をサポートできるスーパージャンクション(SJ) MOSFETのSUPERFET®ファミリを開発しました。

MOSFETを使う際の注意点はゲートドライバが必要になることです。ゲートドライバ は、MOSFETの大きな入力ゲート容量を効率的かつ確実に駆動するために最適化されたソリッドステート・デバイスです。理想的なゲートドライバは、MOSFETのスイッチング損失を最小化すると同時に、同じ入力に対して堅牢な過電圧/過電流保護を提供します。

オンセミは、部品表(BOM)を最小限に抑える必要があるバッテリ充電器向けに特化した低コストのゲートドライバを開発しました。3相ゲートドライバNCD83591は、以下の特性を備えています。

  • 5~60V動作電源範囲
  • 最大250mAの定電流駆動
  • 内蔵アンプ
  • 最大30 kHzのモータパルス幅変調(PMW)
  • 統合された保護

バッテリ充電器で使用するために オンセミ から入手できるその他のコンポーネントには、SiCダイオード(整流用)、コントローラ(電源管理用)、電流センサ(保護用)などがあります。

バッテリ管理と電源ツリー

バッテリ管理と電源ツリー向けに、オンセミは幅広いレギュレータと低電圧温度センサを提供しています。電源ツリー用レギュレータについては、オンセミはDC/DCレギュレータとリニアレギュレータ(LDO)の両方を提供しています。

DC/DCコンポーネントは、最大65Vで動作する同期降圧レギュレータです。リニアレギュレータは低ノイズで、最大1Aで動作します。

NCP730 CMOS LDOレギュレータは、最大38Vの入力電圧と150mAの出力電流をサポートします。NCP730は、わずか1uAという超低静止電流を実現しており、このデバイスはバッテリ駆動アプリケーションに最適なソリューションとなっています。出力電圧は1.2~24Vの範囲で可変または固定として設定できます。

モーション

バッテリ充電器と同様に、モータドライバにもMOSFETスイッチが必要です。BDCモータを双方向に動作させるには、それぞれ2個のMOSFETを搭載した2つのハーフブリッジが必要です。3相BLDCモータを駆動するには、それぞれ2個のMOSFETを搭載した3つのハーフブリッジが必要です。

このようなアプリケーションに対応するために、オンセミは電力アプリケーション向けの新しいT10 PowerTrench®ファミリを含む、低・中電圧(LV-MV)MOSFETの豊富なポートフォリオを提供しています。T10 MOSFETは、前世代に比べて、高い電力密度、スイッチング損失の低減、オーバーシュート/ノイズの低減、高信頼性を実現しています。これらのMOSFETにはそれぞれゲートドライバが必要であり、前述のゲートドライバNCD83591はここでも有用です。

モーションサブシステムで使用できる オンセミのその他のコンポーネントには、モータドライバ、回転位置センサ、オペアンプなどがあります。

保護

MOSFETやコントローラのような低電圧デバイスは保護する必要がありますが、それぞれ異なるタイプの保護が必要です。一般に、MOSFETには熱保護と過電圧保護が必要ですが、低電圧デバイスにはESDに対する保護が必要です。

MOSFETは、ゲートの過電圧や過電流から保護するゲートドライバで保護することができます。また、ゲートとドレインのダイオードによって過電圧から保護することも可能です。オンセミは、さまざまなゲートドライバ(前述の低コストのNCD83591を含む)のほか、ツェナーやショットキーなどの保護ダイオードも提供しています。

電力保護をサポートするためのその他の考慮事項は以下のとおりです。


結論

バッテリ駆動ツールの市場は大きく、拡大し続けています。その継続的かつ加速的な成長は、少なくとも部分的には、コードレスツールを構成するコンポーネントとサブシステムの改善によるものです。

3つの主要なサブシステムは、バッテリチャージャ、バッテリ/電源ツリー、モーションです。これらの各サブシステムは、特定用途向け半導体コンポーネントを中心に設計されています。

オンセミは、コードレスツール市場に特化したデバイスの包括的なポートフォリオを提供しています。これには幅広い低コスト、高効率、高信頼性、小型フォームファクタの半導体コンポーネントが含まれます。高出力MOSFETやSiCダイオードから低電力コントローラやセンサまで、オンセミはバッテリ駆動ツールの設計やアップグレードを始めるのに最適なサプライヤです。

特定の部品/部品番号を含む、この分野におけるオンセミ製品の詳細については、バッテリ駆動ツールシステムソリューションガイドをご覧ください。


関連資料:

T10 PowerTrench® ファミリ